3.新・ふるさと納税の問題点
②地場産品問題
そもそも地場産品規制は、持てる者と持たざる者で格差が生じることは明らかであったため、総務省は、多くの自治体からの要請もあり、地場産品の定義を緩和したと言っているようですが、現実には効果が出るとは思われず、従来から懸念していたとおり、特産品資源の乏しい自治体には厳しい競争環境になると思われます。
地場産品規制
地場産品規制については、地方税法には、以下のように規定されています。
第37条の2 第2項 第2号
都道府県等が提供する返礼品等が当該都道府県等の区域内において生産された物品又は提供される役務その他これらに類するものであって、総務大臣が定める基準に適合するものであること。
返礼品は、その自治体の区域内において
・生産された物品
・提供される役務
・その他これらに類するもの
かつ、総務大臣が定める基準に適合するものとされている。
地場産品規制の理由
総務省は、返礼品が地場産品でなければいけない理由を以下のように述べています。
「地域資源を活用し、地域の活性化を図ることがふるさと納税の重要な役割でもあることを踏まえれば、返礼品を送付する場合であっても、地方団体の区域内で生産されたものや提供されるサービスとすることが適切・・・」
つまり「地域に資する」ことが必要ということです。地場産品で無いと地域に資する取り組みとは言えないということのようですが、本当にそうなのか甚だ疑問です。
なぜ地場産品でなければいけないのか?
本市としても、もちろん返礼品が地場産品であればより良いということは否定しませんが、必ずしも地場産品でなければいけないという総務省の見解には疑問を禁じ得ません。
地場産品でなければ、ふるさと納税の趣旨に反するから?
地場産品でなければ、地域活性化につながらないから?
なぜそう思われるのでしょうか?
総務大臣が言っていたから?
テレビで言っていたから?
冒頭にお伝えした、ふるさと納税の趣旨でもご紹介しましたが、総務省のホームページにある理念を見ても、返礼品が地場産品でなければならないという趣旨を読み取ることはできません。
地場産品規制の趣旨は、ふるさと納税の「意義」に盛り込まれている?
また、総務省のホームページには、「ふるさと納税の三つの大きな意義」として以下のこともあげられています。
第一に、納税者が寄附先を選択する制度であり、選択するからこそ、その使われ方を考えるきっかけとなる制度であること。それは、税に対する意識が高まり、納税の大切さを自分ごととしてとらえる貴重な機会になります。
第二に、生まれ故郷はもちろん、お世話になった地域に、これから応援したい地域へも力になれる制度であること。それは、人を育て、自然を守る、地方の環境を育む支援になります。
第三に、自治体が国民に取組をアピールすることでふるさと納税を呼びかけ、自治体間の競争が進むこと。それは、選んでもらうに相応しい、地域のあり方をあらためて考えるきっかけへとつながります。
ここからも、返礼品が地場産品でなければならないという趣旨を読み取ることはできません。
地場産品でなければ趣旨に反するのか?地域活性化につながらないのか?
総務省HPに掲載されているふるさと納税の「理念」や「意義」には、返礼品が地場産品でなければ制度の趣旨に反するというようなことは示されていません。
また、総務省は、地域資源を活用し、地域の活性化を図ることがふるさと納税の重要な役割ということを理由に返礼品を地場産品である必要があると定義していますが、地場産品以外の返礼品であっても地域の企業もしくは生産者から購入しているため、地域経済は潤いますし、さらにはそのほとんどの返礼品は地方の産品ですので、地域外にはなりますが地方の経済を活発化させています。また、ふるさと納税は雇用創出にもつながっています。
返礼品を活用した寄附募集を批判する声がある一方で、こういったふるさと納税の取り組みは、見方を変えれば、昨今の個人消費が伸び悩む中で、唯一成功している消費喚起策ととらえることもできるのではないでしょうか。
そういったことからも、ふるさと納税は、返礼品は地場産品であってもなくても、しっかりと地域活性化に役立っていると泉佐野市は考えます。
なぜ、地場産品という考え方が出てきたのか?
なぜ、ふるさと納税の返礼品は「地場産品」という考え方が生まれてきたのでしょうか?
「ふるさと」という文言から、何となく返礼品は「地場産品」が良いのではないかというイメージを持たれるのは、よくわかります。
また、地場産品を返礼品にした方が、特産品のPRになりますし、地場産業の振興にも繋がりますので、それもよくわかります。
でも、それが「地場産品」だけにしなければいけない理由にはなりません。
野田大臣が言い出した?目立ちたかった?
なぜふるさと納税の返礼品は「地場産品」という概念がでてきたのでしょうか?
総務省の担当者の話では、野田総務大臣が突然言い出したとのことです。一般的な説としては、野田氏は、総裁選に意欲を示していたため、ただ単に目立ちたかったのがその理由ではないかと言われています。
売名行為、それだけの理由で、どれだけ多くの自治体を混乱に陥れたと考えているのでしょうか。ほんと迷惑な話です。私たちは、今でも野田氏に全国の自治体に謝罪をして欲しいと思っています。
野田大臣の現場を知らないお粗末な発言
また、野田氏が総務大臣の際に、地場産品が無い自治体はどうすれば良いのかという記者の質問に、
「どんな自治体にも地場産品は存在する。地場産品の無い自治体など聞いたことが無い」
「地場産品を作るという発想を持ってほしい」
と、全く的外れな回答をしていました。
確かに地場産品はどこにでもあるのでしょうが、寄附者に選ばれるだけの魅力のある返礼品になりうるかどうか。また、そうした魅力ある地場産品を生み出すことが時間的にもコスト的にもそんなに容易ではないこと、このような取組みは多くの自治体がすでに実施していることを、まったく理解していないということが分かります。
地場産品規制は、不公平
本市が「地場産品規制」が間違っていると訴える理由は2つあります。
1つは、不公平だからです。
自治体には、「地場産品」が少ない、または「地場産品」が無いところもあります。前大臣の野田氏の発言のように地場産品があったとしても、「肉、カニ、米」のような魅力ある返礼品を出している自治体がある中で寄附を集めるには、それらをかき分けて寄附者に選ばれるような特産品でなければなりません。そういった地場産品のない、または少ない自治体には、寄附は集まりづらいのは当然のことです。
総務省が示すふるさと納税の意義にもあるように、ふるさと納税制度は自治体間の競争を前提としています。しかし持つ者と持たざる者の明確な格差が、競争のスタート時点ですでにあるというのは、公平な環境ではありません。私たちはこれを問題と考えており、地場産品規制は不公平であり、総務省の考え方が間違っていると訴えている理由の1つです。
地場産品でなくても地域活性化に役立つ
本市が「地場産品規制」が間違っていると考える2つめの理由は、返礼品が地場産品でなくても、しっかりと地域活性化に役立っていると考えるからです。
前述したように地場産品でない返礼品を揃えても地域活性化に十分に役立っていると本市は考えています。
総務省の姑息なところは、現実と大きくずれている見解であっても、あたかもそれが真実かのように情報発信して一方的な見解を国民に刷り込んでいることです。
このような総務省による刷り込みは他にもあります。返礼品をきっかけにした寄附募集を「ふるさと納税の趣旨に反する」と表現したり、調達率3割を超えるような返礼品を「過度な返礼品」とか「高額な返礼品」と表現したりします。
ふるさと納税の本来の趣旨は、首都圏に一極集中による地方との税収格差の是正ですから、返礼品をきっかけにした寄附募集が趣旨に反するというのは一方の側からの見解に過ぎませんし、少々言い過ぎです。また、調達率3割を超える返礼品を過度としているのも一方的な見解で、ふるさと納税に積極的に取り組む自治体では5割が標準的な取組みだと考えられてきましたので、これも総務省の価値観を国民に押し付けているといえます。今回、ふるさと納税をめぐる総務省とのやり取りの中で、こういった総務省による事実を捻じ曲げた国民へのイメージの刷り込みは非常に上手だと感じました。
このように「地場産品規制」には、持つ者と持たざる者に格差を生じさせるという重大な欠陥があるにも拘らず、総務省はその議論を避けるためにあたかも地場産品以外の返礼品が地域に対して何の役割も果たしていないという一方的な見解を国民に刷り込もうとしています。
地場産品規制は、泉佐野市固有の問題ではない
この「地場産品問題」は、泉佐野市だけの問題ではなく、全国には地場産品資源の乏しい自治体の方が多く、豊富だというイメージが強い北海道や九州の自治体においても特産品資源の乏しい自治体は存在しており、本来ふるさと納税の恩恵を受けなくてはいけない地方の自治体にとって「地場産品規制」は、悪影響を与えることは明らかです。
その証拠に、福岡県の赤村では、地場産品規制の影響が大きく既に昨年12月にふるさと納税の取組みを止めており、その影響は現実のものとなっています。今後もこのような自治体が増えることが懸念されます。
地場産品の少ない自治体に配慮の動き
泉佐野市が「地場産品問題」について、2018年9月の東京都内での記者会見以降、マスメディアを通じて国に問題提起をし続けてきましたが、マスコミ、学者、専門家、世論、国会議員、地方議員など、様々な方面からも「地場産品規制」が不公平を生むとの意見が出てきました。
それを受けて、自民、公明両党から、この問題について、「区域内」の解釈を「都道府県内」まで広げようという動きが出て、総務省に対して意見が出されました。総務省は当初抵抗していたようですが、「地場産品の少ない自治体にも配慮する」ことになり、追加されたと思われるのが、総務省告示第179号第5条第8号です。
特産品の少ない自治体に配慮したという新ルール
総務省が特産品の少ない自治体にも配慮したという内容は以下のとおりです。
<総務省告示第179号 第5条>
8号 次のいずれかに該当する返礼品等であること。
イ 市区町村が近隣の他の市区町村と共同でこれらの市区町村の区域内において前各号のいずれかに該当するものを共通の返礼品等とするもの
ロ 都道府県が当該都道府県の区域内の複数の市区町村と連携し、当該連携する市区町村の区域内において前各号のいずれかに該当するものを当該都道府県及び当該市区町村の共通の返礼品等とするもの
ハ 都道府県が当該都道府県の区域内の複数の市区町村において地域資源として相当程度認識されているもの及び当該市区町村を認定し、当該地域資源を当該市区町村がそれぞれ返礼品等とするもの
自民、公明から出された意見を反映されて、表面上は同一都道府県内の特産品を区域内の自治体が活用できるという内容になっています。しかし、実態は、ほぼ実際的とはいえない内容でした。
新ルールは、まったくの期待はずれ
特産品の少ない自治体に配慮して、同一都道府県内の特産品産を区域内の自治体は活用できるという話でしたが、実際には、ほぼ実現不可能といえます。
条文のイ、ロ、ハの3つを詳細に見ていきたいと思います。
イ 市区町村が近隣の他の市区町村と共同でこれらの市区町村の区域内において前各号のいずれかに該当するものを共通の返礼品等とするもの
(認められると考えられる例)
・近隣の複数の地方団体が連携し、共同で開発したオリジナルの特産品を、当該複数の地方団体が共通して取り扱うもの
⇒開発が前提なので、スタートの時点で不公平なのは変わらない
・ 連携中枢都市圏に参加する複数の地方団体が同意の上、それぞれの地場産品を組み合わせて提供するもの
⇒そもそも訴求力の無い返礼品を組み合わせたからといって訴求力が上がるとも限らない
(認められないと考えられる例)
・生産している市町村の同意を得ずに提供している、区域外で生産された県の伝統工芸品である革製品
イは、複数自治体での返礼品の「開発」、それぞれの返礼品を「組み合わせる」という緩和策であるが、そもそも開発するに値する資源が存在することが前提になりますし、それにかかるコスト、時間を考えると、スタート時点で格差があることには変わりなく、また、「組み合わせ」についても、組み合わせることによって訴求力を上げることが目的と思われますが、そもそもセット商品は選ばれづらいほか、返礼品を組み合わせたからといって寄附者にとって魅力的なものになるとは限らず、それほど効果のあるものとは思えません。また、大前提として、複数自治体の合意形成が必要ですので、競争が前提のふるさと納税の取組みにおいては、実質難しく、実現困難です。
ロ 都道府県が当該都道府県の区域内の複数の市区町村と連携し、当該連携する市区町村の区域内において前各号のいずれかに該当するものを当該都道府県及び当該市区町村の共通の返礼品等とするもの
(認められると考えられる例)
・県内全域の特産物について、県が音頭を取って県内全市町村と連携し、県全域の特産品として、共通の返礼品等として取り扱うもの
⇒資源を持つ自治体の合意が必要なので、実現は難しい
(認められると考えられる例)
・県内の一定の圏域(歴史的、文化的に関連の深い地域)内の市町村共通の特産品だが、現在はある市町村でのみ作られているものを、県の主導の下、共通の返礼品等として取り扱うもの
⇒資源を持つ自治体の合意が必要なので、実現は難しい
ロは、資源の乏しい自治体が資源を持つ自治体の資源を拝借するという緩和策ですが、資源を持つ自治体の合意が前提になりますので、競争が前提のふるさと納税の取組みにおいては、実質難しく、実現困難です。
ハ 都道府県が当該都道府県の区域内の複数の市区町村において地域資源として相当程度認識されているもの及び当該市区町村を認定し、当該地域資源を当該市区町村がそれぞれ返礼品等とするもの
・当該区域の地域資源として、広く一般国民から相当程度認識されているもの
・単一市区町村の判断ではなく、都道府県が区域内の市区町村の意見を集約した上で、複数の市区町村において共通の地域資源として相当程度認識されているものを認定する
(認められると考えられる例)
仙台の牛タン、熊本の馬刺し
・当該区域の地域資源として、広く一般国民から相当程度認識されているもの
⇒「広く一般国民から相当程度認識されているもの」という基準に適合されるには、認められている例としてあげられている「仙台の牛タン」や「熊本の馬刺し」から想像すると、かなりハードルが高いと考えられます。また、最終的には総務省の恣意的な判断になるため、多くの寄附を集めそうな返礼品は、認められないものも多くなると考えらます。
・単一市区町村の判断ではなく、都道府県が区域内の市区町村の意見を集約した上で、複数の市区町村において共通の地域資源として相当程度認識されているものを認定する
⇒都道府県のやる気次第ですが、あまり期待できない
広く一般国民から相当程度認識されていると総務省に認められるにはハードルが高く、ごく一部のもののみ認められることが想定され、ここにおいても持つ者と持たざる者の格差は解消されているとはいえません。
多くの寄附を集める返礼品には、新たな規制が
このように新ルールは、特産品資源の乏しい自治体に配慮したというには程遠く、実際には、ほぼ効果が見込めない内容であると私たちは理解しています。。
また地場産品についての基準は示されていますが、最終的に認定されるかどうかは、国の恣意的な判断になります。これまでの経緯から、今後も多くの寄附を集める返礼品は認められない可能性が高いと思われます。
地場産品規制の実態、特産品の少ない自治体は圧倒的に不利(1号、2号)
特産品の少ない自治体に配慮したという8号があまり効果が望めないという実態があるため、総務省のもくろみどおり、告示の1号から7号が本当の規制の内容となります。
この第1号から第7号について検証したいと思います。まず、1号と2号について。
1号 当該地方団体の区域内において生産されたものであること。
⇒地場産品資源の豊富な自治体が圧倒的に有利になり、持つ者と持たざる者の格差が広がることは明らか
2号 当該地方団体の区域内において返礼品等の原材料の主要な部分が生産されたものであること。
(認められると考えられる例)
・区域内で生産された牛乳や果実を100%使用して、区域外で製造されたジェラート
⇒100%という高いハードルは、資源豊富に持っていないと成立しない
(認められないと考えられる例)
・製造に用いる牛乳のうち区域内で生産された牛乳を約1割使用した、区域外製造のアイスクリーム
⇒規模の小さい、生産量の少ない地域(自治体)には厳しい
期待を寄せていた「加工」が全否定(3号)
特産品の少ない自治体では、区域内で「加工」をしている物産を拡大解釈することで地場産品として取り扱ってきた経緯があり、この「加工」の基準についての判断に大きな期待を寄せていました。しかし、これまで自治体が「加工」と考えていたものは、新ルールでは全否定されることになりました。
3号 当該地方団体の区域内において返礼品等の製造、加工その他の工程のうち主要な部分を行うことにより相当の付加価値が生じているものであること。
(認められると考えられる例)
・区域内で生産された豚肉を、区域内で切断、調理、袋詰めしている豚肉加工品
・区域外で生産された原材料を用いて、区域内の醸造所において醸造した酒
⇒地場産品資源の豊富な自治体や、区域内に工場・加工所がある自治体が圧倒的に有利になり、持つ者と持たざる者の格差が広がることは明らか
(認められないと考えられる例)
・区域外で生産しているが区域内の茶商が監修しているペットボトルのお茶
「加工」の考え方については、自治体が期待を寄せていましたが、ここにおいても大きく期待を裏切られました。「加工」の考え方を関税法施行規則から引用しており、実質的な変更を加える加工又は製造に関する規定が非常に厳しく、これまで自治体が「加工」としていた概念を全否定しています。これにより地場産品の範囲が大幅に狭まることになります。
<関税法施行規則(昭和41年大蔵省令第55号)>
(参考)実質的な変更を加える加工または製造に該当しない例
・輸送又は保存のための乾燥、冷凍、塩水漬けその他これらに類する操作
・単なる切断・選別・瓶、箱その他これらに類する放送容器に詰めること
・改装・仕分け
・製品又は包装にマークを付け又はラベルその他の表示を張り付け若しくは添付すること
・単なる混合・単なる部分品の組立て及びセットにすること
大手メーカー品を排除(4号)
4号は、農協の広域化に伴い、農産物が流通上混在してしまい、区域内で生産されたものなのか、そうでないのか区別のつかないものについて配慮した規定ですが、「認められないと考えられるもの」の例示において、大手メーカー品を排除しています。
4号 返礼品等を提供する市区町村の区域内において生産されたものであって、近隣の他の市区町村の区域内において生産されたものと混在したもの(流通構造上、混在することが避けられない場合に限る。)であること。
(認められないと考えられる例)
・区域内で生産されたものと区域外で生産されたものを全国の店舗で区別なく取り扱っているアイスクリーム
要するに区域内に工場があっても、どこで生産されたものか区別されずに販売しているものは認められないということなので、工場が全国各地にありどこで生産されたものなのか区別せず販売されている大手メーカー品のようなものは認められないということになると思われます。
これまで工場が区域内にあるということで、ビールや工業製品などを提供していた自治体がありましたが、これらも認められなくなる可能性があります。
一見、農協の広域化に配慮したもののように思われますが、実際は大手メーカー品の排除を狙っているところは姑息ではないでしょうか。
街の誇りを返礼品にできないジレンマ(5号)
5号は、ゆるキャラグッズなど、自治体独自の返礼品であることが明白なものを認めていますが、ここでも“街の誇り”を否定しています。
5号 地方団体の広報の目的で生産された当該地方団体のキャラクターグッズ、オリジナルグッズその他これらに類するものであって、形状、名称その他の特徴から当該地方団体の独自の返礼品等であることが明白なものであること。
(認められないと考えられる例)
・区域内で創業した事業者が区域外で生産する即席麺
大阪府池田市が出す即席麺がこれに当たると思われます。池田市にとって、町の誇りともいえる会社の製品を提供することができないのは、いくらなんでもやり過ぎではないでしょうか。NHKの朝の連続テレビ小説で盛り上がっているだけに、水を差す形になると思われます。
総務省の了見の狭さ(6号)
6号は、返礼品の抱き合わせに関する規定です。例えば、認められるものとして「区域内で製造されたそばと区域外で製造されたそばつゆのセット」のようなものです。
6号 前各号に該当する返礼品等と当該返礼品等との間に関連性のあるものとを合わせて提供するものであって、当該返礼品等が主要な部分を占めるものであること。
(認められないと考えられる例)
・区域外で製造されたビールと区域内で生産されたタオルをセットにしたもの
上記は、泉佐野市の取り組みを差していると思いますが、これは地場産品のタオルとビールの抱き合わせで地場産品と認めてもらおうとしていたわけではありません。単に泉州タオルのPRのため、サンプリングを兼ねてキャンペーンの「オマケ」として実施をしていたものです。本市は、そのような言い訳で認めてもらおうなどとは考えていませんでしたが、そのような見方をしている総務省の了見の狭さに驚きました。
新たな、持つ者と持たざる者の格差
7号は、返礼品として役務を提供しているものについての規定で、「役務の主要な部分がその自治体に相当程度関連性のあること」としており、アンテナショップを活用し特産品PRのため実施する飲食イベントを認める一方で、民間ポータルサイト「ふるなび」が実施している、都内飲食店で利用できる「グルメポイント」を規制しています。また、さらには、ピーチポイントなどの航空券や旅行関連の返礼品についても規制するものと考えられます。
7号 当該地方団体の区域内において提供される役務その他これに準ずるものであって、当該役務の主要な部分が当該地方団体に相当程度関連性のあるものであること。
(認められると考えられる例)
・地域の特産品とPRするための区域外のアンテナショップ内の飲食スペースにおいて、区域内で生産された野菜や肉をふんだんに使ったメニューを提供
(認められないと考えられる例)
・区域内で肥育されたブランド牛を扱う首都圏等の高級な飲食店において使用できるグルメポイント
上記の二つの取り組みの内容は、ほぼ同様のものと思われますが、アンテナショップを持っている自治体と持っていない自治体で扱いが異なることになります。
「ふるなび」のグルメポイントを活用している自治体においてもアンテナショップがあれば当然積極的に活用すると思われますが、都内や都市部のアンテナショップはコストがかかるため設置している自治体はごくわずかです。設置できないような小さな自治体は、「グルメポイント」のような返礼品を活用したいと考えるのは当然ですが、ここにおいても、持つ者と持たざる者に格差が発生してしまいます。
地場産品規制は、総務省も非を認めている?
総務省は、「地場産品規制」について、持つ者と持たざる者に格差を生じさせると批判が相次いだため、特産品の少ない自治体に配慮することにしました。
そもそも規制をすること自体が間違っているから配慮する必要があり、今回の「地場産品規制」は、総務省も非を認め、やり過ぎと考えているのかもしれません。